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固視微動

丁,李

固視微動の計測と解析

 眼球が固定した視標を注視するときに発生する高周波数の微小振動は固視微動と呼ぶ。固視微動については不思議で興味深い特徴の一つとして、眼球運動を制御する眼筋は「随意筋」に分類されているが、固視微動は不随意運動である。すなわち、固視微動は心臓と同じく、不随意に運動するにもかかわらず、横紋筋(殆どの横紋筋は随意筋)で駆動されている。従って、眼球のほかの運動と異なり、固視微動は心臓と同じく自律神経によって調節されていると考えられる。心臓の拍動、心電図などを用いて身体状態を測定する手法と同じ、脳から体表に伸びた唯一の器官である眼球の不随意運動、すなわち固視微動の計測は、人間の精神状態を「察知」するのに非常に有効である可能性を秘めていると考えられる。

 固視微動を応用したロボットビジョンに関する研究の高まりを受け、眼球運動のひとつである固視微動を今までに無く高精度で解析し、その特性を応用することでロボットビジョンの発達に寄与したい。固視微動は振幅の大きいほうからmicrosaccade、drift、tremorの三つからなる。測定方法はそれぞれの固視微動が十分確認できる解像度(0.5μm/pix)とフレームレート(1000fps)を持った高速度カメラにより、眼球表面(眼球強膜)を観察して眼球の回転を算出する。現在わかりつつある特性としては、microsaccadeが水平方向に主に発生することなどがある。

 本研究内容の基本技術は本々固視微動が視覚認識に対する役割を解析するために開発した.すなわち,高速カメラ(1000フレーム/秒)と高倍率カメラレンズ(10倍,1.9[μm/pix])を用いて,眼球の強膜(眼の白い部分)を撮影し,肉眼で見えない強膜表面の毛細血管の分布模様を鮮明に捕らえ,画像処理技術を用いて眼球の微小運動を検出する技術であった.図1は固視微動計測装置とその実験風景であり,図2は強膜の高倍率ビデオ画像の一コマである.固視微動を測定するために様々な視標を提示してその視標上の一点を注視しながら画像を撮っていた.画像処理の結果の一例は図3に示した.この一連の実験の成果の一つは,3種類がある固視微動の中に,立体認識に関連すると思われるマイクロサッケード(高速な跳躍運動)は水平方向のみに現れるという結論を計測結果が示唆した.

 この研究では,本来眼球位置を測定するために撮影した毛細血管の高速動画像が血管内の赤血球の流れとその脈動をはっきり見えるようになったことから,眼球運動測定以外の目的に利用可能であることに確信した.人間の眼球の強膜部の血管は人間の体表で最も浅い位置にある血管であり,その血管上の被膜である結膜も体表で最も透明度の高い粘膜である.さらに,強膜の色は白であり,光の反射率が高い.以上の理由から,強膜は人間の血管と血液を無侵襲で観察する上で最良な場所であると考えられる.

 


測定風景

 


最新の実験装置.両眼を同時に計測可能になった.

 


測定映像

 


固視微動の計測結果.
眼球表面の移動量を測定している.

 

 

固視微動を利用した立体視手法

眼球運動の一つである固視微動に基づいたエッジ(輪郭)検出法を用いてロボットビジョンにおける空間の距離情報取得や両眼立体視等を目指す.具体的には、眼を水平方向に微小振動させつつ、取得した映像をフレーム間で差分をとることでエッジ画像を取得、対象物のエッジは眼からの距離によって太さが変化するため、対象のエッジの立体視が可能となる。またエッジのこの特性を利用することで左右の眼の映像を統合するときにマッチングの精度を向上することができる。この研究を通して固視微動が人の立体認識に寄与していることを証明したい。


エッジ情報を利用して左右の映像を統合

 


エッジ画像例